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Accelerando

3月 11th, 2009

猫が登場するSFと言えば「夏への扉」。遥か昔に読んだときの記憶が間違っていなければ、この猫は確か喋らなかったはず。でも、もし猫が饒舌だったら?

William Gibsonに始まり、Neil Stephensonに受け継がれたサイバーパンクをさらに加速させたらこうなる、という見本。脳の外側に持っている計算能力を失った途端に「ここは誰?私はどこ?」状態でアイデンティティの危機を迎えたり、いとも簡単に人格を分岐させたり、またマージしてみたりするくだりはGreg Egan風でもある。

早い話が、古今東西のありとあらゆるガジェットや宗教、経済学、量子力学にコンピューターサイエンス、サブカルチャーだのポストモダンだのを物凄い勢いで放り込んで、ロブスターで味付けして猫に喰わせてみたらこんなのができました、というところか。物語中に出てくる人類と同様に、フューチャーショックの嵐に吹き飛ばされそうになる感覚を味わいながら、細かいところの深い意味は気にせずにひたすら前へと読み進めるのが正しい。

それでいて、Greg Eganほどには重くならないのは、現実離れしたとんでもない世界にありながらも、そこに出入りしている「人物」たちが妙に人間味があって、そのギャップがなんだかユーモラスに見えてしまうところ。外見は物凄い進化した存在になってるはずなのに、やってることは相変わらずなグダグダ加減で、全然進歩してねーじゃん、みたいな。この辺りのバランスが絶妙で、退屈せずに最後まで走れる。

あ、ちなみに、猫がもし饒舌だったら。たぶんうっとおしくてしょうがないだろうと思うな、きっと。


“アッチェレランド (海外SFノヴェルズ)” (チャールズ・ストロス)

cesare 読書

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