いろいろと多忙で忘れかけていたのだけど、前々職を辞めてから一年が経過した。いや、それ以降が激動過ぎて振り返る余裕がなかったんだってばさ。ちょうど手がけていた仕事がちょっとだけ一段落したので、この隙に一年を振り返っておこうと思う。
そもそも、前々職を辞めると決めたのが2008年の初夏のあたり。11年ほど続けていた仕事も、そろそろ考え直す時期に来ていた。今後もこの会社で同じように仕事を続けるのか? 否、と答えを出した。何だかんだ言いつつも、この仕事は好きだし、職場もそんなに悪くないと思う。でも、このまま定年まで続けるかと問われれば、それはない、とも思った。歳の頃は34。違う世界に飛び込むなら、今が最後のチャンスだと思った。これを逃したら、後は会社に意地でもしがみつくような人生しかない。リスクはあるけど、このまま人生が固定されてしまう危険よりは遥かにマシ。辞めることを決断した。
次に行くべき職場は、意外なほどあっさり決まった。正社員だけで数百人を抱える中堅企業から、非正規雇用を合わせても10人に満たないベンチャーへ飛び込んだ。今までとは全く違う世界を見たかったから。得たものは、人数に反比例するかのような自由度。いちいち根回しをしたり、関係者との調整をする必要もなく、自分が「これで行くべき!」と思ったことを即座に実行に移してしまって大丈夫な環境というのは、気楽でもあり、また全責任が自分にあることを嫌でも意識させられるという意味で、非常に面白い環境だったと思う。
残念ながら、その環境も長くは続かなかったが。詳細は割愛。人生、そういうことも起こり得るし、ベンチャー企業に身を置いていると、その確率は低くない、というだけのことだ。まぁ、半年も経たないうちにそんな機会が訪れるとまでは予想してなかったけれどもね。解雇を告げられた日のことは忘れない。出社してみたら、社長と二人きりだった。出社するなり、話があると呼ばれた。話を聞いた。話しながら、社長の手が震えていた。こんな通告をするのは初めてなのだろう。きっと無念なんだろうな。妙に冷静に話を聞いた。話を聞き終わって、同意した。お互い、恨みっこなし。ドライに行こう。次の仕事を探さねば。3月末の話だ。
「次の話」は意外なことに、矢継ぎ早に舞い込んできた。ほぼ定期的に参加していた勉強会で知り合った人に「実はクビになっちゃったんですよー」なんて話をしたら、「うちの仕事手伝ってくれない?」というオファーが。勉強会人脈の底力を知った。興味深い話はいくつもあったが、当時最も関心を持っていた分野を得意とする会社からの提示を受けることにした。その頃に関心を持っていたのは、アジャイルな開発手法を実践すること。チャンスが向こうからやってきた。有難い。受けることに決めた。同時に、サラリーマンとしてのキャリアをひとまず終わりにして、個人事業主あるいはフリーランスとして生計を立てていく決断をした。
フリーランスとしての初の仕事は、前々職でお世話になっていた会社のお手伝い。この業界は狭い。以前は「発注する相手」だったのが、今は「お仕事を頂く相手」だ。いや、立場がこのように変わったからと言って「自分も堕ちたな」なんて嘆きたいわけじゃない。立場は、その時々で如何様にでも変化するだけのことだ。幸運なことに、お世話になることになった職場では、このあたりの事情に理解のある人達ばかりだった。短い期間ではあったが、仲良くしてもらったし、いろいろと勉強になった。感謝。
その後はまた別の会社のお手伝いを。これについては現在進行形なので、詳細は割愛。一段落ついたらまた語るかも。
この一年で得たもの。一つめ。正社員であっても、居場所がなくなることはある、という現実。いや、これは前職への当てつけでも何でもなく。そういう可能性は誰にだってあるんだ、ってことが身をもって解ったという話。僕の場合は、たまたまベンチャー企業で直面する羽目になったが、おそらく大企業であっても同じことは起こるだろうな、とも思った。むしろ、酷いダメージを受けるようなタイミングではなかったのが幸運。くどいようだが、前職への恨みとかは微塵もない。純粋に、運の問題だ。これが、何の準備もできてないところに降ってきた話だと悲惨だったかもしれない。が、幸いにして、どの会社にも依存していない時期に起きた事件だった。ある意味、運が良かった。
この一年で得たもの。二つめ。アジャイルな手法について、業務で実践してみる機会があったこと。これについては、ほんとにラッキーだったとしか言いようがない。チャンスをくれた人達に感謝したい。この業界で長いこと仕事をしているが、アジャイルな手法というのは、なかなか理解されない。機会が少ないという単純な意味ではなくて、「そもそも、そんな技法に賛同してくれて、且つ実践してみるなんて無謀なことに挑戦するような組織は極めて稀」というレベルで希少な機会なのだ。その意味でも、理解してもらえる人を得られたというのは大きい。技術者として、良い機会に恵まれた。
この一年で得たもの。三つめ。人脈。いや、「人脈」なんて俗っぽい表現では不適切かもしれないが。お世話になった人達とのつながり全部。なんだかんだ言っても、一番大事なのは人との繋がりですよ。例えば、直接お世話になった、プロジェクトに参加してた皆様の、さらに周りにいて、いろいろとサポートしてくれた皆様。勉強会とかでヒントをくれた皆様。実際にお手伝いすることはできなかったけれど、身の上を心配してくれて、お仕事のオファーを頂いた皆様。みんな貴重な繋がりだと思うし、手を差し伸べてくれたことに感謝してます。現実に身を結ぶことには繋がらなかったけれども、ただ「声をかけてくれた」ということ自体にどれほど勇気づけられたことか。言葉では表現し尽くせないけれども、とても有難かったです。ほんとうにありがとうです。
さて。そんな感じで一年経った。次はどうしようか。いろいろ野望はあるのだけど。少なくとも言えること。それは、自分の信じた道を歩けば良いのだ、ということ。これがこの一年にいろいろと経験してみて確信したことは、自分の信じた道を歩けば良いのだ、ということ。とは言え、この我が侭放題な路線を歩いて行くためには、自分一人の力だけではなくて、関わる人達の理解と協力も必要だと再確認した一年。一年前、「俺様は独りでもやっていけるんだ」とばかりに前々職を飛び出して以来、いろんな人に、いろんな教訓をもらってきた。その過程で、我が侭を通して良いところと、それだけじゃやっていけないところの境界線を教えてもらったように思う。
この一年で得たものを元に、しばらく(次の十年ぐらい?)は生きていけるように思う。この一年で得たもの、それは、そんな自信。
ともあれ、お世話になった人達に感謝を。次に何をするのかは、また別の機会に語ります :)